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染め形紙展@ギャラリー湯の山みち

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兵庫県三木市のギャラリー湯の山みち
染め形紙の展示を観に行ってきました。
三木市大塚の戎神社から少し西、
湯の山街道と呼ばれる道沿いにあります。

染め形紙は、染色の技法の一つ、型染めに使われるものです。
代表的なものが、武士の裃などに使われていた細かい柄で、
現在では江戸小紋となり、格の高いきものとされています。
形紙は和紙を貼りあわせて、柿渋を引いて乾燥させて作り、
そこにさまざまな文様を彫ります。
非常に緻密で高度な技術で、いくつかある彫りの技法ごとに
人間国宝がおられるくらいです。

一般的には、江戸小紋の形紙は「伊勢形紙」と呼ばれ、
江戸時代から伊勢が産地として広く知られています。
ところが、本来は三木市の特産品であるそうです。
史料に形屋や紺屋(染物屋)の名前が多く見られ、
保存されていた形紙が数多くこちらのギャラリーに
収集されています。

三木の産業構成が変化した状況や、
形紙の産地が伊勢にとってかわられた経緯等は、
はっきりとはわからないのですが、
残されている形紙やコピーを見ると、
技術の高さ、美意識の高さがうかがい知れます。
現在では、彫りはもちろん、染めの職人さんもおられず、
劣化のはげしいものもある形紙にはふれることもできないので、
これらのすばらしい文様たちが、生地に摺られて、
きものとなって、生きることはないのだと思うと、
残念でなりません。

展示自体は3月15日までと記した看板があったのですが、
私が行ったのが17日で、普通に展示されていました。
↑のスペース以外にも、常設展会場の2階に行って、
申し出ると、保管庫的な場所に置いてあるものを
見せていただけると思います。
ちなみに、常設展のメインは化石(!)です。

※「かたがみ」の表記は「型紙」が一般的ですが、
 「形紙」も許容範囲であり、ギャラリーでいただいた
 資料の表記が「形紙」であったので、そちらに準じています。
※※江戸小紋、伊勢形紙についての記述は、
   「ひと目でわかるきもの用語の基本」世界文化社
   を参考にしました。

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竹内栖鳳展@姫路市立美術館

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姫路市立美術館で開催中(~3月29日)の
竹内栖鳳展を観に行ってきました。

「近代日本画の巨人」と呼ばれた画家で、
他派の筆法や西洋画の画法を積極的に取り入れつつ、
伝統絵画の根本的理念を掘り起こすことで、
新しい流れを作り出し、後進に影響を与えたそうです。

まずは動物たち

一昨年、竹内栖鳳という画家について何も知らぬまま、
京都で開催されていた展覧会に行きました。
その時も動物画がいいなと思ったのですが、
今回も印象に残ったのはやはり動物たちでした。
ウサギやネズミといった小動物たちよりも、
獅子(ライオン)や虎、龍が可愛らしく感じるのです。

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ポスターやチケットのデザインにもなっている↑のネコより、
虎や獅子の表情やポーズの方が何ともいえず愛らしく、
「宝珠を奪い合う二頭の龍」と説明にある作品の龍たちは、
仲良く見つめあい、よりそっているように見えるのです。

余白の美

そして、今回新たに印象に残ったのは、空間の使い方です。
多くの作品が、実に大胆に余白を残して描かれていて、
屏風絵や襖絵になると、ほぼ空白(!)の面があったりして、
襖はずしたら、後で戻すの大変だろうと心配になるくらいです(笑)
あるいは、雨の中を飛ぶ烏を描いた金地の屏風絵は、
ぱっと見た目には、地の部分が空白に見えるのですが、
烏に斜めに降りかかる雨を見た後に、もう一度見ると、
あるかなきかの細い細い線が一面に描かれているのがわかるのです。
また、これは栖鳳の絵に限ったことではありませんが、
掛け軸になっている作品の表装に使われている裂(きれ)が
色も文様もさまざまで美しく、絵以外の部分の空間を
見事に演出していました。

器物と着物

前回の展覧会では見かけなかったのですが、
今回は、絵画だけでなく、茶碗や棗、水指などの茶道具に
栖鳳が絵を描いた作品や、娘に贈ったという打掛が
展示されていました。
茶道具についてはよくわかりませんが、
さりげなく無造作に描いてあるようで、
やはり空間、余白への意識が感じられました。
打掛は表地のダイナミックな松の絵柄もよいのですが、
写真での展示ではあるものの、裏地の鶴の柄と、
地色の美しい紅に目を奪われました。

別にものすごく好きで行きたくて、という思いで
行った展覧会ではなかったのですが、
だからこそ、ニュートラルに新鮮な気持ちで観て、
感じることができたのかもしれません。

おまけ

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駐車場から美術館に向かう途中に見えた姫路城です。

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ねこの写真展♪@明石

明石市立文化博物館で新春特別企画展として開催中(~8日)の
岩合光昭写真展『ねこ』に行ってきました!

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さすがに人気の特別展で、実は先週一度行ったのですが、
駐車場が満車!
明石に詳しい友人が「あの駐車場満車になることあるんや」
とあきれていました。
あらためて今週トライ! 幸運にも1台だけ空いていて、
私の後の車は、先週の私と同じく、Uターンを余儀なく
されていました。

「世界ネコ歩き」

NHKのBSプレミアムで不定期に放送している
「岩合光昭の世界ネコ歩き」という番組が大好きです♪
根っからのイヌ派の私ですが、この番組を見ている時だけは、
ネコにだだハマりです(^_^;)
ネコはもちろん、ネコを撮っている岩合さんが
とってもキュート♡
ネコが好きとか、ネコに好かれるとかいうレベルでなく、
岩合さんって、実は人間に化けたネコなんじゃないかとすら
思えてくるくらいです(笑)

ネコ、ねこ、猫・・・

当たり前ですが、会場はネコの写真がいっぱい!
順路を示す矢印の代わりに、床にはネコの足跡です。
写真だけでなく、添えられたキャプションもステキです。
「安心してください。怪しいものではありませんので」
「ネコはプライバシーを大切にします」
「まぶたを肉球でキュッキュッしてもらいます」
どんな写真かはご想像くださいね(^_-)

自分にお土産

絵葉書、クリアファイル、メガネケース、ポーチ等々、
今回展示の写真をプリントしたグッズも多数あり、
さんざん悩んだのですが、ねこの写真集の文庫版と、
やっぱりイヌ派、岩合さんのいぬの写真集を
購入して帰途についたのでした。

※ちょっと変わった歩き方講座
 「和洋をまたぐ《歩き》の極意」受付中!

 

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純国産宝絹takaraginu展

特別展「天皇皇后両陛下の80年」を見た後、
同じ高島屋京都店内で開催されていた
(会期27日までなので、終了しています)
「純国産宝絹takaraginu展」の会場の一つである
5階呉服売り場に移動しました。

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1階の四条通り側入ってすぐの「ゆとりうむ」というスペースにも
美しい振袖や、繭、絹糸の展示があり、
そこでいただいた↑パンフレットに、
結城紬の地機(じばた=織り手が床に座って織る織機)による
実演があると書いてあったので、それを見に行ったのです。
残念ながら、ちょうど地機による手織り体験の時間に重なって、
織り手さんによる実演は見られなかったのですが、
同じ時間に、手描き友禅の下絵付けの実演が始まり、
こちらも大変見応えがあったのでした。

職人技!

まず、地模様が入った白生地で仮仕立てした振袖を
モデルさんが身にまとい、青花(ツユクサの一種からとった染料)で
事前に描いた下絵をもとに、直接大胆に牡丹が描かれていきます。
次に、観客から描いてほしい花のリクエストをもらって、
それを迷いのない筆運びで描いていかれるのです!

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菖蒲、胡蝶蘭、桜・・・
それぞれの花のつき方、葉の形、花弁の枚数などなど、
花を描くためには、しっかりとした知識の裏付けが必要なわけです。

150125_1513こちらは、わかりづらいですが「宝尽くし」という柄で、
打出の小槌、宝珠、金嚢(きんのう)など、
宝物を集めたおめでたいものですが、
もちろん、「宝尽くし」とは何であるか、何を描くのか、
知識に基づいて描かれています。

思わぬ偶然で、すばらしい職人の技に出会えました♪
ちなみに、この後四条通りを散策した時に、
まさに宝尽くし文様の振袖を着たお嬢さんが
前を歩いていたのでした。

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特別展 天皇皇后両陛下の80年

現在、京都高島屋で開催中(~2月2日)の特別展
「天皇皇后両陛下の80年-信頼の絆をひろげて-」
を見てきました。

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私は、母がミッチーブーム&ご成婚ブームの真っただ中に
娘時代を送ったことから皇室ファン(この表現は畏れ多い?)だったのと、
自分自身が礼宮親王(現・秋篠宮殿下)と同い年で
誕生日が2週間違いということから、
皇室には割と幼い頃から関心があり、
テレビ番組や雑誌記事をよく目にしていました。
今これを書いている目の前の本棚には
『皇室の至宝 御物』という13巻セットの図録があります(笑)

以下、展示の中からほんの一部ですが、
アトランダムに印象をご紹介していきます。

あたたかい写真の数々

この特別展には、約170点のお写真と、
約130点のゆかりのお品が展示されているそうです。
お写真はほとんどが、宮内庁の職員の方の撮影か、
報道関係者によるものだと思われますが、
1枚だけ、天皇陛下が撮られた皇后さまのお写真があり、
その1枚がやさしさ、あたたかさ、慈しみといったもので、
輝いているようにすら感じられました。
他には、木の枝にからんだ皇后さまの髪を
天皇陛下がほどいておられる場面を捉えた写真も
印象的でした。
確か、秋篠宮殿下ご成婚の折に、
紀子さまが殿下の汗を拭いてさしあげる1枚が、
問題になったことがあったと思うのですが、
その何十年も前に、こんなお写真が撮られていたのですね。
同じように微笑ましいお写真だと思うのですが、
行為者が皇族の方ならOK、逆はNGということでしょうか。

美しいお手の書たち

もともとこの特別展のことを知った時に、
皇后さまのお手による書の写真を見ていました。
歌会始のお歌など、傍らに同じことが活字で記してあっても
読めない・・・(^_^;)
それでも、見るだけで眼福、眼福と拝んでしまいます。

稲作と養蚕

天皇陛下が御自ら稲作に携わっておられるのは
割と広く知られていることだと思いますが、
皇后さまが養蚕に携わっておられることは、
知る人ぞ知る、という感じではないでしょうか。
蚕が繭を作るための蔟(まぶし)と呼ばれる道具まで、
皇后さまがご自分のお手でわらを使って作られるそうです。
美しい緑の繭は天蚕と言われる野生種の蚕、
ピーナッツの殻のような形は日本純産種の蚕「小石丸」、
かなりマニアックですが、染織業界ではこれも、
知る人ぞ知る知識ではあります。

キリがないので、この辺で・・・(笑)
次回の記事は同じ京都高島屋で開催されていた
絹、きもの関係の展示についてです。